3月13日に行った総括質疑を掲載します。
〇地下鉄海岸線経営再建プロジェクトをはじめとする市の施策推進体制について
(上原)
先日の代表質疑で、地下鉄海岸線の収支改善について質疑したところ、市長から「交通局長をトップとした海岸線経営再建プロジェクトチームを立ち上げ、収入増と経費削減に取り組んでいる」との答弁がありました。交通局に聞くと、プロジェクトチームでは、利用促進、運輸体制効率化、投資・修繕費等削減について検討がされているとのことですが、何度聞いても数値目標やスケジュールが全く示されず、果たしてこれでプロジェクトと言えるのか疑問を持ちました。言うまでもありませんが、それぞれに具体的な目標やスケジュールを掲げ、目指すべきゴールを明確にしなければ、各局との連携強化による全市あげての抜本的な改善を実現することはできません。令和5年12月からプロジェクトチームを立ち上げているとのことですが、1年以上経過しているにも関わらず交通局からは、まだ結果が出たものはないと聞いています。どんな企業であっても、いつまで何を完了するというスケジュールや数値目標が示されていないプロジェクトなどあり得ない話です。
海岸線の一日の利用者数は当初の予測が13.5万人でしたが、実際は5万人にも届いていない。また、令和4年の本会議で指摘した市バス62系統についても、当初2千人の乗車予測であったのを、数か月後に800人に下方修正。さらに実際の利用者は、令和5年度決算で当初予測の10分の1にも満たない178人であり、私たった一人で行った調査結果と近似値であります。交通局は一体、どのような手法で利用者の需要を算出しているのでしょうか。裏付けを取らずに希望的観測だけで需要予測を出し、事業を実施する。その結果、地下鉄海岸線においては累積赤字1200億円という解消しようがない赤字を抱えた状況を作り、今後、そのツケは運賃値上げという形で神戸市民にのしかかってくるなんて事は看過できません。
このような杜撰な試算が経営の悪化に繋がり、神戸市民の利益・サービスを著しく低下させている事は明白であり、重大問題として改善していく必要があると考えますが、見解を伺います。
(城南交通局長)
地下鉄海岸線が厳しい経営状況にあることを承知しておりまして、これまでの経営性改善策の延長ではなければ、現状を脱却できるような収支改善には至らないということは、認識しておるところでございます。
これまでご指摘いただきました海岸線のプロジェクトチームでございますけれども、経営改善に向けまして数点議論を行ってきております。その過程におきましては、いかにスケールダウンすることによって経費削減効果が発揮できるのか、またサービスの大幅な低下に繋がりかねない面がないかと、多分的な角度指定により、検討検証を行う必要がございますので、一定の時間を要することはご理解いただきたいと思っております。
経営改善の方向性を示している段階になれば、来年策定予定の経営計画2030等に反映してお示ししてまいりたいと考えております。
(上原)
海岸線経営再建プロジェクトチームは立ち上げから1年2か月経過しても具体的な成果も見えず、内容を見ても、これまでの取り組みと何が違うのかよく分かりません。既に経営破綻していると言っても過言ではない地下鉄海岸線の収支改善は、交通局だけでは無理だと考えます。そこで、城南局長をお迎えした経緯がありますが、やはりお一人では困難でしょうし、職員に嫌われても改革するんだという厳しい姿勢も必要だと思います。そこで、2010年に経営破綻したJALを京セラの名誉会長だった稲盛氏が奇跡のV字回復に導いた様に、城南局長の右腕となるような外部のさらなるスペシャリストを入れて収支改善を進めるしかないと思いますが、ご見解を伺います。
(今西副局長)
交通事業における収益改善やサービス向上といった事業戦略を高度化していく必要があることから、交通事業管理者に先ほどご紹介ありましたように城南局長に、鉄道会社の経験者ということでお越しをいただいており、また副局長を自動車部長に、バス会社経験者を登用させていただくとともに、令和5年度より、自動車・高速鉄道事業ともに鉄道事業バス事業での経験を有する人材をスーパーバイザーとしてそれぞれ登用し、民間事業などのスキルノウハウを積極的に取り入れることができるよう努めているところでございます。
今後必要に応じて民間の鉄道バス会社や、あるいはコンサルなどの御支援も受けながら、引き続き経営改善に取り組む体制を確保してまいりたいと考えております。
(上原)
外部人材を既に複数入れているとの事ですが、全く収支改善に結びついていませんよね。物価高騰もありますが、むしろ単年度のランニングコスト不足は4億円近くまで増大しています。
稲盛氏と一緒にJAL再建に関わった「JALの奇跡」の著者によると、就任してすぐにJALの幹部と話して感じたことは、「評論家の様に現状を冷静に見ているが、当事者意識が無かったこと」だったと言います。私は、海岸線経営再建プロジェクトチームに限らず、全市的に見ても職員の当事者意識が圧倒的に足りていないと感じます。例えば、先日のこども家庭局の局別審査でも質疑した「谷上駅前のフリースペース」についても、事前に11月~1月に利用者が減少した原因を問い合わせると「日が暮れるのが早いことや気温が低い時期のため」と回答されました。しかし、前年同時期は3倍近くの中高生が利用しており、要因分析を怠っているしか言いようがなく、到底、税金を投入している事業として、当事者意識があるとは思えません。そしてこれら分析は、議員が質疑する段階で初めて行われる事が多いと感じます。数年経てば異動となることが職員の念頭に置かれているのでしょうが、神戸市クレドにも記載されている「圧倒的な当事者意識」を改めて醸成し、職員の意識改革を強力に進めていく必要があると考えますが、この根本的問題について、どのように取り組んでいくのかご見解を伺います。
(今西副市長)
神戸市政の運営におきましては、職員1人1人が市民目線で当事者意識を持って業務を遂行していくことが極めて重要でありまして、そういった点を神戸市クレドに行動指針として掲げ、その意識行動の浸透を図らせていただいているところでございます。
そして組織全体で実践していくために様々な取り組みを行わさせていただいているところでございます。新年度に入った段階では組織全体でビジョンを共有するため、新年度方針会議というものもやらせていただいておりますし、あるいは人事評価制度の中で各職員が自身の役割や取り組みを自己目標上位者と相談しながら設定をするという取り組みをやらせていただいてございます。さらに上位者と対話する機会を設けることで、職員が主体的に考え、行動できるような環境を整えているところでございます。
神戸市クレドの浸透におきましては、その他研修あるいは職員の事務用パソコンでのデスクトップの表示や職場内での掲示を行うということなど、様々な取り組みを行わさせていただいているところでございます当事者意識を醸成し行動の変革に繋げるには、継続かつ粘り強い取り組みが不可欠だと考えてございます。今後も職員1人1人が主体的に考え、行動できるよう、しっかりとした取り組みを進めてまいりたいと考えております。
(上原)
「圧倒的当事者意識」醸成について取り組んでいるではなく、当事者意識が備わってきたという結果を示せるようにすべきです。市会議員として関わって来て、その様な実感はほぼありません。
JAL再建にあたっては、幹部の意識改革のための研修会が週4回実施されたと言います。「売上を最大に、経費を最小に」のマインドを現実のものにするには数字による経営が必須。数字が明確になれば「赤字幅を減らそう」との意識づけが出来る。「全員参加の経営」を実現するためには全社員を納得させる必要がある。JAL再建の哲学は、そのまま神戸市交通局、もっと広く言うと神戸市政全体で取り入れるべきではないでしょうか?
最後に念のためお聞きしますが、地下鉄海岸線の赤字幅を最小限に減らすまで、目標値を定めて出来得ること全て取り組むこと。その達成無しで、市民負担を強いること、つまり市営地下鉄の値上げはしませんよね?
(城南交通局長)
あらゆることを排除することなく検討に入れてまいりたいと考えております。
(上原が時間切れですが言いたかったこと)
交通局長、特に、改革のために民間鉄道会社から来られた城南局長が守るべきは、交通局職員ではなく「神戸市民の利益・サービス」です。
地下鉄海岸線の収支改善については、早急に、具体的な目標やスケジュール、目指すべきゴールを明確にし、達成の為に必要なら改革できる外部人材確保を強く要望しておきます。